2009年度読書録


 

『図説・韓国の歴史』(金両基:監修)

河出書房新社:2008年10月30日新装改訂二版4刷発行

 

先史時代から今日までの5000年の歴史を写真と文書で纏めています。見かけはコンパクトなんですが、中身は濃いですよ。遺跡や史跡の写真が豊富なのが嬉しいです。韓流時代劇における史実と照らし合わせる参考になります。

『童謡の秘密』(合田道人:著)

祥伝社:2003年6月30日初版発行

 

13の童謡を紹介していますが、“童謡の謎”4冊目となればネタ切れで、驚きもなければ面白味もない内容になっています。2002年に『童謡の謎』を3冊出版し、今度は『童謡の秘密』ですからね。これでは推敲する時間もなく、大味になるのも無理はありません。童謡の謎ブームも一時的でしたね。

『突飛な芸人伝』(吉川潮:著)

新潮文庫:2001年2月15日第2刷発行

 

17人の芸人の楽屋話的な芸人人生を満載したエッセイです。直接、著者が当該芸人と触れ合っているので読み応えがありますね。17人のうち川柳川柳・祝々亭舶伝・柳屋小三太の3人は、顔も浮かばない芸人でしたが、知っているような気分になりましたよ。

コント・レオナルドから役者になった芸人と思っていた石倉三郎が元々役者だったことは知らなかったなァ。石原裕次郎と高倉健から取って石倉という芸名にしたとのこと。東映ヤクザ映画全盛時代の端役として数多く出演しているそうだから、機会があったら探してみよう。

『新歴史の真実』(前野徹:著)

講談社α文庫:2005年4月6日第2刷発行

 

日本人が愛国心をなくしたのは、全て戦後の自虐歴史教育が原因という、かなり飛躍した論法が展開されています。自論に都合のよい事項だけを並べ立てる論法は、知らない相手を納得させるのに最も有効な手段で、著者の経歴が関係していると思いますね。私も会社時代によく使った手法です。

「日本人の心の支えであった天皇制や家族制度は戦後、軽視・破壊され、愛国心や憂国心は善ではなく、一転、悪とされたのです。日本ならではの高い徳目は抹殺され、代わりに西洋流の個人主義や物質文明が植え込まれました」という見解には同意です。だけど、それを歴史教育のせいにするのは疑問で、私は間違った平等主義からくる道徳教育の欠如に由来していると考えています。

歴史を学ぶには、先入観を持たず、事実だけを把握し、そこから推理していく楽しみを持つことですね。

 

『プロレス影の仕掛人』(ミスター高橋:著)

講談社α文庫:2004年1月20日第1刷発行

 

プロレスが勝ち負けを売り物にするスポーツでないことはプロレスファンなら端からわかっていることで、この本に書かれていること自体は驚くことではありません。最近のプロレスが面白くないのは、格闘技ということにこだわりすぎて、試合が単調になっているからだと思いますね。

この前、CATVで新日本プロレスを観たのですが、登場するレスラーがどれも同じような技ばかり繰り出し、観ていて飽きてきました。前座からメインエベントまで明確な変化がないんですよ。悪役=外人対善役=日本人という図式がなくなり、日本人同士の対決になってプロレスらしさがなくなってきましたね。海外のプロレスの現状がどうなっているのか、よくわかりませんが、もう一度原点に戻り、外人対日本人の面白いマッチメイクを作り出して欲しいものです。

かつて私たちをワクワクさせた、“呪術師”“鉄の爪”“生傷男”といったような冠がつく、それだけで観たくなるような外人レスラーとの対決をね。

 

『歌舞伎町アンダーワールド』(日名子暁・夏原武・山岡俊介・他:著)

宝島社文庫:2003年11月10日第8刷発行

 

不動産屋・売春ブローカー・ホストクラブ・中国人クラブ゙・闇金融・裏ギャンブル・フーゾクといった歌舞伎町に棲息する人間たちをルポしたものですが、表面的なものばかりで驚きはありません。深く追求したら、命がけということになるでしょうけどね。

先日、歌舞伎町でも以前は健全地帯のコマ劇場周辺をブラついたのですが、劇場が閉館となりそのエリアが荒廃しているような気がしました。昼間でもそう感じたのですから、夜ともなれば真にアンダーグラウンド化しているんじゃないかなァ。家族で気楽に映画を楽しむ場所の雰囲気じゃありませ〜ん。

『昭和史七つの謎』(保阪正康:著)

講談社文庫:2003年1月30日第2刷発行

 

五・一五事件と二・二六事件の日本人的思想、真珠湾攻撃、スパイ合戦の状況、東日本共産主義国の実現性、東京裁判、占領下での反米活動、M資金の他に番外として昭和天皇の謎についても言及しています。そのどれもが1冊の単行本になるくらいの大きなテーマですが、資料や関係者の証言を基にポイントを上手く捉えていますね。

それにしてもドサクサに乗じて北海道占領を企んでいたソ蓮のやり方には大国のエゴを感じます。アメリカだって同様で、朝鮮半島に巧く手をつけたので南北朝鮮が分断されることになった訳で、結果としては北朝鮮のようになるより韓国民は幸福だったかも知れませんがね。歴史に“イフ”はないけど、“イフ”を考えることによって、歴史の奥行きが深まってくるのは間違いありませ〜ん。

 

『血だるま剣法』(平田弘史:著)

青林工藝社:2008年12月18日第5刷発行

 

マンガ史をひもとく時、貸本屋でマンガを読んで育った私にとって、貸本劇画は大きな存在です。貸本屋には少年マンガ月刊誌の他に、貸本屋用に出版されていた数多くの劇画本がありました。マンガ月刊誌が小・中学生向きだったのに対し、劇画は青年を対象にしていました。といっても、面白ければ少年も青年もないわけで、日の丸文庫から出ていた劇画月刊誌の『影』(ハードボイルド専門)や『魔像』(時代劇専門)はよく読んでいましたね。『魔像』に掲載されていた平田弘史の作品は完成度が高くて、私のお気に入りでしたよ。

『血だるま剣法』は、『魔像』の別冊として刊行された長編で、平田弘史の初期最高傑作と云われていますが、貸本屋に置かれたのはわずか1ヶ月でした。部落解放同盟の抗議で、回収・廃棄・絶版処分となったんです。その後、40年以上封印され、やっと復刊されたのですが、噂通りの作品でしたね。とにかく凄まじいの一語につきます。その凄まじさの中に、差別された人間の憤りが著者の画力と相俟って、人間ドラマとして伝わってきま〜す。

 

『ロボット二挺拳銃』(前谷惟光:著)

マンガショップ:2007年10月2日初版発行

 

貸本屋向けには劇画だけでなくマンガの単行本も数多く(劇画が登場するのは1956年以後)出版されていました。それらは、手塚治虫のような伝統的なマンガの絵で、その殆どが稚拙だったので貸本屋の棚に並んでいても私は見向きもしませんでしたね。そんな中で、いつも手に取っていたのが前谷惟光の“ロボット”シリーズです。アメリカのサイレントコメディのような味があったのと、ページ数も多くなかったので借りることはせず、立ち読みして、『魔像』や『影』を借りていたんですけどね。

『ロボット二挺拳銃』は、寿書房から1958年〜60年に全3巻で出版されたものを一つにした復刻版です。“ロボット”シリーズは、『ロボット三等兵』が一番有名なのですが、西部劇マンガということでゲットしました。西部劇の定番(カウボーイ・保安官・幌馬車・インディアン・ゴールドラッシュなど)を、ほのぼのした笑いで描いています。前谷惟光は、『ロボット三等兵』でメジャー(大手出版)入りしますが、笑いのセンスそのものが古いので長続きしませんでしたねェ。

 

『剣豪伝(天の巻)』(歴史を旅する会:編)

講談社文庫:2003年8月15日第1刷発行

 

『歴史読本』や『歴史と旅』に掲載された“剣豪伝”を集めたアンソロジーです。第一部:武蔵の真実と第二部:乱世の剣で構成されており、戦国の剣豪では宮本武蔵についての関心が他を圧倒しています。

他の剣豪と比べると、武蔵に関する資料は数多くあり、逆にそれが、古くは“菊池寛・直木三十五論争”のように諸説まちまちになっているんですね。早乙女貢の「剣聖宮本武蔵七つの謎」は、武蔵非名人説をとっており、武蔵好きには興味がつきない内容になっています。

ところで、歴史を旅する会とは、歴史学者や市井の研究家、歴史愛好家たちの自由な交流を目的につくられた歴史研究会とのこと。

 

 

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