2009年度読書録


 

『幕末ガンマン』(生島治郎:著)

講談社:1990年12月5日第1刷発行

 

主人公は上海に密航してガンマンになる男でして、ヒュースケンのところで働いていたので英語が喋れてアメリカのことも知っているという設定です。上海密航の船で高杉晋作と知りあいになるんですな。上海でアル中ガンマンの弟子となり拳銃のテクニック(早撃ちやファニングなど)を教わります。そして、ガンマンから形見として譲られるのが、サミュエル・コルトが創ったコルトSAAの試作品。ガンマンを殺した英国人を決闘で倒し、上海を脱出して日本に戻り、高杉晋作の用心棒になります。

高杉晋作の死で、この小説は終るのですが、最後の方はハショリすぎて今イチでしたね。史実に絡めるフィクション部分が平凡すぎて面白くありません。主人公の銃のテクニックを活かした展開だったら良かったのにねェ。

『砂塵きらめく果て』(ノーラ・ロバーツ:著、飛田野裕子:訳)

ハーレクイン:1995年9月1日第1刷発行

 

東部のミッション・スクールを卒業した主人公が父の住むアリゾナの鉱山町にやってきて、ガンマンの男と恋をするロマンス小説ですが、内容は完全に西部小説です。

冒頭のガンマン登場シーン(決闘シーン)は映画の『拳銃王』そのまんま。ガンマンがグレゴリー・ペックで、名前をあげるためにガンマンに挑戦するバカ者がリチャード・ジャッケルね。主人公の乗った駅馬車がアパッチに襲われますが、ガンマンが主人公を救出するんですな。主人公が町に着いた時は、父親は落盤事故で死んでおり、土地と鉱山が遺されます。ガンマンは主人公に東部へ帰るように言いますが、主人公がそこで暮らし始めることになり、ガンマンは古い知りあいを主人公の使用人として世話します。町の有力者である農場主が主人公の鉱山を買いたいと言ってきたことに疑問を持ったガンマンが鉱山を調べると金の鉱脈が見つかります。農場主はそのことを知っており、鉱山を手に入れるために主人公の父も彼によって殺されたんですね。でもって、最後はガンマンと農場主の対決ね。西部劇でお馴染みのパターンが次々に展開していき、一気に読んでしまいました。

 

『PEACE MAKER・ピースメーカー』(皆川亮二:著/ヤングジャンプ・コミックス)

2巻:2009年2月21日第3刷発行

3巻:2009年2月24日第1刷発行

 

2巻は2008年8月24日に発売されていたのですが、ついつい買いそびれていたんですよ。父の形見のコルトSAAを持って兄を捜す旅をしている主人公が、少女を救ったことから殺戮集団・深紅の処刑人から狙われ、早射ちの腕前を見せたことから訪れる町々で決闘を挑まれるという西部劇タッチのマンガだったので続きを購入したのですが、どんどん西部劇の世界から離れていきました。それでも、主人公をライバル視して行動を共にするガンマンの愛銃がS&Wスコーフィールドというのは嬉しいですけどね。

画像は第3巻。大闘技都市の決闘(バトルロイヤル)で不敗の王者コニー・レヴィンね。暗闇でも見ることのできる夜眼族の女で、武器はショットガン。普通のショットガンでなく、ソードオフ・ショットガンだったらよかったのにねェ。残念!

 

 

『宮本武蔵』(佐々木守:作、小島剛夕:画)

笠倉漫画文庫:1995年9月20日初版発行

 

マンガの宮本武蔵といえば吉川英治の原作を独特の解釈で劇画化した井上雄彦の『バガボンド』が圧倒的存在感を持っていますが、武蔵の人生感を、『五輪書』を基に、佐々木守の構成力と小島剛夕の画力で描いた本作品も、単巻マンガにしては密度の濃いものとなっていま〜す。

『団塊老人』(三田誠広:著)

新潮新書:2004年7月20日初版発行

 

団塊の世代の老後についての提言書。著者が1948年生まれの団塊の世代なので、個人体験に基づく老後の哲学を述べています。

「質素で堅実な暮らしの中で、企業という幻想の共同体から解放されて、独自の価値観による自立した生き方を模索する。自分自身に投資して、文化と教養を高めていく。自分なりの趣味をもつ。あるいは社会のための奉仕をする。少ない費用で、生き甲斐を得る」とは、真にその通りなのですが……

『金閣寺に密室』(鯨統一郎:著)

祥伝社ノン・ノベル:2000年5月25日第3刷発行

 

副題に“とんち探偵一休さん”とあるように、建仁寺の小坊主一休が、金閣寺の密室の中で首吊り死体で発見された足利義満の死の謎を解く歴史ミステリーね。

虎に殺された山椒大夫の事件を発端に、一休さんの有名なトンチ話も絡んで一級のミステリーに仕上がっています。著者の作品に興味を持って読んではガッカリしていたのですが、これは文句なく面白いで〜す。

 

『荒野に咲く花』(スーザン・マレリー:著、石川園枝:訳)

ハーレクイン・ヒストリカル:2001年1月5日発行

 

1879年のモンタナが舞台の西部ロマンス小説です。花嫁募集広告でやってきたヒロインが、花婿を仇と狙う男に誘拐されるんですな。男の目的は、留守中に牧場を襲撃され、父親を死に追いやった悪党に復讐するためで、ヒロインの夫となるべく男がその首領なんです。誘拐されたヒロインは、何度も脱出を試みますが失敗し、紳士的な男の態度に真実を知り、愛が芽生えていきます。

 

『代表作時代小説(平成4年度)』(日本文藝家協会:編)

光風社:1992年5月30日発行

 

1991年度の諸雑誌から、村上元三・伊藤桂一・武蔵野次郎・綱淵謙錠・尾崎秀樹が編集委員となって選んだ24の短編が収録されており、これまで暇な時1〜3編をシコシコ読んでいて、やっと最後の10編をまとめて読んで終了となりました。

短編集は片手間に読む時には重宝しますね。剣豪小説あり人情時代劇ありと、バラエティに富んでおり、神坂次郎の「牛斬り加卜」は長編にしたいような題材でした。ところで、『代表作時代小説』は昭和30年から毎年発刊されているのですが、現在も続いているのですかねェ。

『荒野のホームズ、西へ行く』(スティーヴ・ホッケンスミス:著、日暮雅通:訳)

ハヤカワミステリ:2009年6月15日発行

 

グスタフとオットーのアムリングマイヤー兄弟が活躍する“荒野のホームズ”の第2作目です。列車強盗対策用にサザン・パシフィック鉄道の鉄道保安官として雇われた二人は、サンフランシスコ行きの急行列車に乗り込むのですが、手荷物係が殺される事件が発生します。事件捜査中に列車強盗が現われ、何とか撃退するものの、犯人に間違われたホーボー(無賃乗客)も殺されます。

貨物車両に積んであった荷物に不審を持ったグスタフは、単純な列車強盗でないと推理するんですな。ブレーキの壊れた手押しトロッコでの犯人追跡からラストに向けてはノンストップ・アクションが展開され、機関車での闘いは真に西部劇ですね。

『韓流時代劇完全ガイド』

コスミック出版:2009年7月26日発行

 

この本にはドラマガイドとして2枚のDVDがついており、今後の参考にしようと思いましてね。テレビで観るものといえば、最近は映画以外では韓流時代劇が圧倒的に多いんですよ。

7作品の第1話と22作品の予告編が収録されており、早速、予告編集を観ました。『快刀ホンギルドン』や『新・別巡検』のようなチャンバラものより、『淵蓋蘇文(ヨンゲソムン)』や『太祖王建(ワンゴン)』のような史劇の方に興味がひかれますね。似たようなシチエーションばかりなんですが、何故かクセになるんですよ。BSのどこかで、放映してくれないかなァ。

 

 

 

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