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『九つの殺人メルヘン』(鯨統一郎:著) 光文社文庫:2005年5月10日第2刷発行 九つのグリム童話の新解釈とアリバイ崩しを合体させたミステリーです。酒場に集まった3人の厄年男から聞いた話を基に、美人のメルヘン研究家が謎を解く安楽椅子探偵ものでもあります。トリックそのものは驚くべきものではありませんが、酒場で交わされる薀蓄話が楽しいんですね。 以前に読んだ『邪馬台国はどこですか?』も面白かったし、鯨統一郎の作品に興味が湧いてきました。 |
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『世界の日本人ジョーク集』(早坂隆:著) 中公新書ラクレ:2006年9月15日第15版発行 一時期話題となった外国人から見た日本人観がジョークの中に凝縮されています。 “新製品が世に流通するまでには、全部で四つの段階がある。まず、アメリカの企業が新製品の開発をする。次にロシア人が、「自分たちは同じ物を、もうすでに30年前に考えていた」と主張する。そして、日本人がアメリカ製以上のクオリティのものを造り、輸出し始める。最後に、中国人が日本製に似せた偽物を造る”なんて、ジョークでなくて真実だァ。 |
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『タイムスリップ森鷗外』(鯨統一郎:著) 講談社文庫:2008年9月18日第6刷発行 第1刷が2005年7月15日ですから、著者のファンが増えてきているということでしょう。私も興味をもった一人でして、期待して読んだのですがウ〜ン。 発想の面白さはあっても、長編のためか、間延びしていますね。短編連鎖ほど楽しめませんでした。初期の短編連鎖集を探して読むことにしましょう。 |
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『広島ヤクザ抗争全史』(本堂淳一郎:著) 幻冬舎アウトロー文庫:2008年12月5日初版発行 終戦直後の第一次抗争から共政会と侠道会の手打で終焉する第三次抗争までの26年半の広島ヤクザ抗争史は、これまでにも色々なもので書かれており、特に目新しさはありませんでした。ただ、『仁義なき戦い』しか知らない人には、抗争の全体像がわかって楽しめると思います。 それにしても、ヤクザがヤクザらしかったのは昭和まででしたね。 |
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『此よりは荒野』(水無神知宏:著) ガガガ文庫:2008年11月23日初版発行 ティーンエイジャー向けのライトノベルで、19世紀末のアメリカ西部を舞台に、母と妹を不死者秘儀団に殺された少年が、“屍人殺しのステラ”と呼ばれる賞金稼ぎの少女と魔物退治をする物語です。 映画でいえば、タランティーノの『フロム・ダスク・ティル・ドーン』の世界ですね。武器はドラグーンやシャープスといった拳銃やライフルですが、戦う相手は狼男に吸血鬼で、ゴブリンやトロールといったファンタジーでお馴染みの生物が鉱山で働いていたりして、西部劇というよりファンタジー・アクションです。 狼男には有効な銀の弾丸が吸血鬼には通用せず、それより強力な“妖精銀の弾”が必要なんだよォ。吸血鬼の女王がドラゴンと共に逃げ去ったので続編が書かれるのでしょう。 |
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『芸能ビジネスを創った男』(野地秩嘉:著) 新潮社:2006年3月15日初版発行 副題に“渡辺プロとその時代”とあるように、ナベプロを築き上げた渡辺晋に関するノンフィクションです。取材協力者が渡辺晋に近い人が多かったせいか、成功話が中心になっていて、衰退期(理由)については触れられていません。どの世界でもそうですが、成功するには先見性と革新性がなければ駄目ですね。ナベプロ隆盛の背景にはテレビの存在が大きく、それを巧く利用したといえるでしょう。 このことは後から見れば当り前のことなんですが、その当り前のことに気づかないのが凡人なんで、凡人ばかりだから成功者が出るわけで〜す。 |
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『赤穂浪士』(東映時代劇傑作DVDコレクション) DVDで楽しみながら東映時代劇の魅力をマガジンで紐解いていくDVD付きマガジンシリーズの創刊号ね。すでに第2号が発売されているのですが、創刊号特別価格990円だったので、“忠臣蔵”DVDということもあり購入しました。 マガジンの中身は薄っぺらくて資料的価値はありません。発売予定の50作品のリストを見ると、疑問に思う作品が少なからずありますね。テレビCMで葵新吾が「気に入ったぞ」と言っていましたが、私は気に入りません。次号からは購入予定な〜し。 |
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『最期』(藤田まこと:著) 日本評論社:2006年10月20日初版発行 藤田まことが自分の人生について語っている本です。これまで疑問に思っていたことがわかって楽しめました。『びっくり捕物帖』や『スチャラカ社員』に出演していたのは、ダイラケ劇団に所属していたからだとかね。 『てなもんや三度笠』の時は、ナベプロに移っていたんですね。1964年8月3日〜67年6月26日にTBS系列で放送されていた『おれの番だ!』という番組があるのですが、植木等・ハナ肇・谷啓・藤田まことの4人が主役を持ちまわりするコメディで、クレイジー・キャッツでない関西系の藤田まことが何故出演しているのか当時不思議だったんですよ。ナベプロだったんですね。 必殺シリーズの中村主水でブレイクし、コメディアンだったことは過去のものとなり、現在では名優・藤田まことになりましたねェ。 |
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『タイムスリップ明治維新』(鯨統一郎:著) 講談社ノベルス:2003年7月5日第1刷発行 女子高生・麓うららが活躍する『タイムスリップ森鴎外』の続編で、前作は森鴎外がタイムスリップして現代に来たのですが、今回は麓うららが幕末へタイムスリップするんですな。でもって、小栗上野介と入れ替わった未来人(小栗に整形して未来から幕末に来たのだよ)が変えようとする歴史を、未来からきたタイムパトロール員と阻止するSFユーモアorナンセンス小説です。 歴史を修正して、元の現代の世界に戻ったら歴史の教科書で鞍馬天狗が実在の人物になっていたりして、結構笑わせてくれます。ところで、17歳の女子高生が8年間幕末時代で過して戻ってくるんですが、それ相応に身体も齢をとるんじゃないですかね。鏡を見たら小皺があったりしてね。25歳はお肌の曲がり角だよォ。 |
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『生きざま死にざま』(三國連太郎:著) KKロングセラーズ:2006年4月1日初版発行 単なる名優でなく、役者として信念を持って行動した生き方に感じ入りました。祖父が被差別部落出身ということが役者感に大きな影響を与えているようですね。今でこそ歌舞伎は古典芸能として格式高いものになっていますが、歌舞伎役者もドサ回りの役者も、“同じ穴の中で生きているにすぎない”として、同等に考えているところは流石です。実際、歌舞伎の発祥は河原者とよばれる遊芸民から始まったのは周知の通りで、歌舞伎の言葉の起源も“傾く”からきています。“傾く”とは、日常的な秩序の感覚から逸脱して風俗に影響を与えることで、その時代の先鋭的な志向を背負い表現することなんですね。創生期の映画もテレビも歌舞伎だったんですよ。 “役者は哲学を持つべき”、“成りきるのでなく、演じる人物の姿と気持ちを内面に借りて演じる”、“実のフィルターを通して虚を演じる”といった含蓄のある言葉が多々あり、三國連太郎の演技の真髄がわかったような気がしま〜す。 |