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『映画の歓び』(笠井嗣夫:著) 響文社:2005年10月15日初版発行 著者の思い入れを込めた監督論。日本人監督10人、外国人監督9人という構成になっており、外国人監督にハリウッド監督が一人もいないというのは、詩を愛する著者の人生観の表れでしょうね。 私が知っている外国監督はゴダールとデュヴィヴィエだけ。日本監督でとりあげていた田中登と塩田明彦は私の知らない監督で、つまり普通の映画ファンには馴染みのない監督論になっています。映画の観方は人それぞれですが、映画好きの気持ちが伝わってくればそれでいいのです。 |
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『ドキュメンタリーは嘘をつく』(森達也:著) 草思社:2005年3月22日第1刷発行 ドキュメンタリー映画監督の著書だけあって、読んでいて納得感があります。確かに編集という作業がある限り、そこには制作者の意思が反映されるわけですから、客観的事実を伝えているわけじゃないんですよね。 著者の『悪役レスラーは笑う』を読んだ時に、その取材力に驚いたのですが、映画にするつもりだったんですね。結局、陽の目を見なかったのですが、観たかったなァ。スポーツまで演出しようとするテレビ局に真のドキュメンタリー制作は期待できないとなると、良識ある映画人の個人の力に頼るしかないのか。完成した映画も海外で評判にならないと、日本では話題にならないというのは、日本の映画文化の貧困さを感じます。 NHKでドキュメンタリー映画の時間枠を設けてくれませんかねェ。 |
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『ハリマオ マレーの虎、六十年後の真実』(山本節:著) 大修館書店:2002年3月17日初版発行 谷豊が何故ハリマオと呼ばれるようになったのかを知りたかったのですが、結局わからずじまいでした。タイ国境に近いマレー東岸の港町クアラ・トレンガヌで谷一家は理髪店を営んでいましたが、1933年に満州事変が勃発し、反日華僑の暴漢に8歳になる妹が虐殺される事件が起こります。当時、豊は帰国して福岡に居たのですが、前々年に父親が死んだこともあって、帰国した家族から妹の事件を知るやマレーに戻ってきます。イギリス官憲の手ぬるい事件処理に怒った豊は、表面上は理髪店をしながら、裏では英国人や中国華僑に対しての強盗稼業。最初はコソ泥程度だったものが、行動半径が拡大していき、1938年頃にはマレー・タイ国境を挟んで、マレーのコタ・バルとタイのナラティワッを本拠地にして3千人の部下を従え神出鬼没の活躍をします。そして、いつしか“ハリマオ・マラユ(マレーの虎)”と呼ばれるようになるんですね。 日英戦争を目前に控えた1941年、南方方面の特務機関(F機関)が、マレー方面の工作にハリマオを利用しようと考えます。マレーの官憲から追われてタイで潜伏中のハリマオはF機関の要請により日本軍に協力することになります。そして、日本軍の作戦を手伝ってジャングル踏破中にマラリアに罹り、1942年3月17日に死亡します。ハリマオが英雄として日本国内で有名になるのは、4月3日に各新聞で伝説に彩られたハリマオの死亡記事が掲載されてからです。新聞記事の反響は大きく、さまざまなメディアがハリマオを題材とした作品を発表します。広沢虎造の浪曲にまでなっているんですよ。戦前は戦意高揚が目的のメディアによる“大衆受け”する英雄作りは、戦後は商業目的に形を変えて続いていますねェ。 |
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『玉置宏の昔の話で、ございます』(玉置宏:著) 小学館:2004年12月20日初版発行 玉置宏さんといえば、『ロッテ歌のアルバム』での「1週間のご無沙汰でした」のフレーズで有名ですが、あれが彼のオリジナルでなく漫談の牧野周一さんから譲り受けたものだとは知りませんでした。 三波春夫と村田英雄が犬猿の仲となった事件など既にテレビのトーク番組で語られていることが半分以上ありましたが、昭和30年代の芸能界の事情が色々わかり楽しい内容になっています。 巻末に曲紹介ナレーション集がついていますが、基本はやっぱり七五調ですねェ。 |
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『「李香蘭」を生きて』(山口淑子:著) 日本経済新聞社:2004年12月17日初版発行 日経新聞の“私の履歴書”に連載されていたものを単行本化したもので、題名にある通り、1933年の李香蘭としての歌手デビューから58年の女優引退までを中心にした自伝です。 日本人でありながら中国人スターとしてスポットライトを浴びたことで、華やかな世界にいても客観的に自分を見つめることができたようですね。単なる思い出話でなく、当時の日中関係の様子を踏まえた芸能史にもなっています。本文では語られていませんが、彼女のジャーナリスト的資質が、女優としての復帰でなく、ワイドショーの司会から政治家への道を歩ませたような気がしま〜す。 |
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『邪馬台国の殺人』(中津文彦:著) カッパ・ノベルス:2002年1月25日初版発行 邪馬台国・九州説を唱える学者が殺され、学者の甥が事件を調べていくうちに古代日本の宗教戦争の謎が明らかになってくるという歴史ミステリーです。 古代文書の宮下文書、九鬼文書、上記、東日流外三郡誌に書かれているウガヤ王朝の謎から始まり、太陽信仰のヤマトと雨雲信仰のクマソが何代にもわたって争ったということが著者独自のレトリックで解明されていきます。 この作品に出てくる田道文書なる古代文書は、これまで聞いたことがなく著者のオリジナルだと思うのですが、これが説得力を持っているんですよ。日本の古代史(平安時代以前)は謎が多くて、色々解釈できて非常に面白いので〜す。 |
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『ちびまる子ちゃん記念館』(豆大福プロダクション:編) フジテレビ出版:2000年2月10日初版発行 私にとって日曜日の夕方は、夕食を挟んで、『笑点』→『ちびまる子ちゃん』→『サザエさん』のテレビを見ながらボンヤリしている時間なっています。片付け事の時間がズレこんだり、急ぎの用ができたりして、『笑点』や『サザエさん』は見ないことが結構あるのですが、『ちびまる子ちゃん』は真ん中ということもあって見る機会が多いんですよ。時代設定が昭和45年〜50年になっており、懐かしさもありますからね。 登場人物はたいてい知っていると思っていたのですが、クラスメートのたかしくん、とくちゃん、折原まさるは知らなかったなァ。会社勤めをしている時に、野口さんソックリな社員がいて、思わず野口さんと言ったら返事をしたのにはマイッタ。自分でも似ていると思っていたんですね。「私、皆に野口さんと言われるんですよ。クックックッ……」 |
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『剣は語る』(戸部新十郎:著) 青春出版社:1998年2月1日初版発行 25人の剣豪ついて語ったエッセイです。その中で、異才の剣客として天然理心流の近藤周助を取り上げているのは、この手の剣豪エッセイには珍しいです。 近藤周助の養子が有名な近藤勇で、天然理心流の試衛館から幕末史を彩る人物が出てきたのは確かなんですけどね。だけど、剣名を上げるような逸話が周助にはないんですよ。「剣術なんてえものは、試合で勝とうが負けようが、どうでもよろしい。不断にやっておりさえすれば、いざというとき役立つもんさ。役立てねえのは心がいけねえ」と門弟にいつも言っていたとのこと。う〜ん、含蓄のある名言だ。 |
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『週刊実話』 2006年9月9日購入 マカロニウエスタンについて掲載されているという情報を某BBSで知り、コンビニで購入。 『週刊実話』なんて、買ったのは何十年ぶりだろう。サラリーマンにとって、金を出してまで読む週刊誌ではないですからね。だけど、学生時代は行きつけの食堂で、食べこぼしや染みのついた『週刊実話』を、よく読んだものです。 ネクタイを必要としない労働者や学生にとって、どこにでもいるような姐ちゃんのグラビア(洗練されていないため、却ってソソルのです)に、“ヤクザ”と“風俗”を中心とした記事は興味津々。広告もマトモな週刊誌では掲載されないようなものばかり……たっぷりマン喫!名器カズノコ天井(ローション・バイブレーター付)→通販商品ですよ。内容は、昔も現在も変りませんねェ。同じ路線の週刊誌に『週刊大衆』と『アサヒ芸能』がありますが、『週刊実話』が一番扇情的で〜す。 ところでマカロニの記事ですが、内容は?というところもありましたが、初心者向けによく纏まっていました。この特集で紹介した作品は、来年1月に発売予定とありましたが、既にDVD発売されているんだよなァ。既存分の在庫がなくなり、再発売ということですかねェ? |
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『夢一途』(吉永小百合:著) 主婦と生活社:1990年11月1日第75版発行 映画出演数100本を機に、吉永小百合が自らの映画人生について語った自伝です。現在、日本では映画スターと呼べる女優がいなくなりましたが、吉永小百合は真に映画スターですね。映画へのこだわりが、この本から伝わってきます。 彼女も映画が斜陽となった1971年はテレビに活躍の場を移し、過密スケジュールをこなしています、そのため、声が出なくなるんですね。この時の経験が、テレビより映画という気持ちを強くしたと私は思っています。いい映画よりも、吉永小百合らしさの出る映画にどんどん出演して欲しいで〜す。 |