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『大石内蔵助』(加来耕三:著) 光文社文庫:1999年12月20日初版発行 忠臣蔵=赤穂事件は謎だらけで、それだから色々解釈できて面白いのです。新説が出てきたら、内容はともかくとして必ず読むようにしています。 討入りに参加した浪士の殆どが微禄の藩士だったことについて、赤穂浪士の討入りの1年前に、鍋島藩士10名が切腹、9名が流罪になった喧嘩事件を例にひいて、“侍道”の勇気を重んじ、“一分”の体面に生命を賭し、売られた“喧嘩”は買うという、戦国時代の“傾き者”の精神が元禄時代でも残っており、特にこの傾向は軽輩ほど強かったという考えには納得しました。大石内蔵助は官僚タイプでなく、泰平の世にあっては無能な人だと私も思いま〜す。 |
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『タレント文化人100人斬り』(佐高信:著) 教養文庫:1999年10月30日第25刷発行 初出が10年以上前の人物評価ですが、現時点でも古びていないですね。この本の俎上に上がった人物は進化していませんねェ。これは彼らを支持する一般大衆が進化していないということです。 最近の日本人は、ワンフレーズ小泉への支持にみられる単純さへのあこがれというものがあって、複雑な思考をたどって自分で判断するのが面倒くさいという傾向があるようです。愛社心にしろ、愛国心にしろ、押しつけがまししくそれを唱える者にろくな奴がいないのに深く考えようとしない。労働時間は増えているのに、年収(時間当たり賃金)が減っているという現実は、著者のいう“社蓄”がこの本が書かれた頃より確実に増えていますねェ。 |
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『ケヴィン・コストナー ハリウッドの新しき帝王』(トッド・キース:著、奥村恵美:訳) 近代映画社:1992年8月20日初版発行 一般的にはケビン・コスナーですが、近代映画社は何故かケヴィン・コストナーと表示していますね。ケビン・コスナーに限らず、名前のカタカナ表示は統一が難しいです。私は無頓着なので、日記を書く時、日によって表示が異なることがありますが、その点はご容赦。例えば、ゲーリー・クーパーになったり、ゲイリー・クーパーになったりするんですよ。 ところでこの本ですが、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』でコスナーが頂点に立った時に出版されたものなので、どうしても成功物語の要素が強くなっています。最近のコスナーは今イチなので、帝王と呼べるか疑問なんですが、コスナーの映画に対する考え方はよくわかりました。イーストウッドの後を継いで西部劇を製作できるのは、現在では少年時代に西部劇への思い入れが強かったコスナーだけでしょうねェ。 |
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『手塚治虫西部劇傑作集』(手塚治虫:著) ちくま文庫:2004年10月10日第1刷発行 「 荒野の弾痕」他12の西部劇マンガが収録されています。副題に“二階堂黎人が選ぶ!”とあるのですが、巻末の解説で選定理由について触れていなかったのは残念です。とはいっても、収録作品はそれぞれ特徴があり、読めば何となく選定された理由がわかるんですけどね。 「凸凹牧場」は、『ワンワン保安官』や『早射ちマック』のような動物を擬人化したものだし、「光線銃ジャック」はSF西部劇。「グランドメサの決闘」はマカロニ・ウエスタン的情念の世界を描いていますし、「無法の街」は嵐タコの助が活躍するサムライ・ウエスタンですからね。手塚治虫の幅の広さに驚かされます。 購入してすぐに読みはじめたのですが、文庫本のためコマ割も文字も小さくて読みづらく、途中で放り出しました。その後、気分が乗った時にページを開いて、やっと読了しました。齢をとると、文庫本マンガはつらいで〜す。 |
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『コールドマウンテン(上・下巻)』(チャールズ・フレイジャー:著、土屋政雄:訳) 新潮文庫:2004年4月1日第1刷発行 ロマンス小説に毛の生えた程度のものかと考えていたのですが、これが中々の優れもので、1997年度全米図書賞を受賞したのがわかります。通常の小説に比べて会話部分が極端に少ないですが、心情描写は南北戦争当時の風物を巧みに取り入れて見事に活写されています。西部劇ファンにとっては詳細な風物描写がたまらなく嬉しいのです。訳者があとがきに書いているように、140年前のアメリカに浸りきり、その雰囲気を堪能できました。 それにしても、この小説に出てくる風物は資料としても役立ちま〜す。 |
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『夕暮れに抱擁を(上)』(サンドラ・ブラウン:著、秋月しのぶ:訳) 集英社文庫:2005年6月25日第1刷発行 ジャンルからいうとロマンス小説なのですが、舞台が西部開拓時代なので西部小説としても読めます。 主人公は、雨の荒野で産気づいた女性。彼女はテキサスへ向かう幌馬車隊に助けられますが、結局、死産します。幌馬車隊には、出産で死んだ母親の代わりに乳を欲しがる赤ん坊がいて、彼女が乳母の役目をします。そして、ロマンス小説ですから当然、赤ん坊の父親と愛し合うようになります。主人公の過去、男の過去には謎があり、サスペンスあふれる展開となっていま〜す。 |
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『夕暮れに抱擁を(下)』(サンドラ・ブラウン:著、秋月しのぶ:訳) 集英社文庫:2005年6月25日第1刷発行 主人公は、義兄から性的暴行を受けていたんですね。それで妊娠したのですが、義兄は殺人鬼で主人公を追って、次々と殺人をおかします。そして幌馬車隊にも犠牲者が……。 男は、昔はジェシー・ジェームスの仲間で、手配書の回っているお尋ね者。死んだ妻の父親と、ピンカートン探偵局の捜査員が彼を追っています。結構、西部劇らしい内容で、楽しめました。 |
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『大きな森の小さな家』(角川文庫:1993年5月10日第3刷発行) 角川文庫:1991年9月20日第5刷発行 200ページに満たない薄い文庫本なので簡単に読めました。ローラが自分の体験を書いた本は全部で7冊あり、これは第1作目です。 『大草原の小さな家』以前の物語で、1872年のウィスコンシン州の大きな森の中の一軒家に住むローラの5歳の誕生日から始まります。西部開拓時代の生活が少女の目を通して描かれているんですね。都会生活に疲れた時、自然の中で生き抜く一家の物語は癒しになりますねェ。 |
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『大草原の小さな家』(角川文庫:1993年5月10日第3刷発行) 角川文庫:1993年5月10日第3刷発行 先日観た2005年版の『大草原の小さな家』(監督:デビッド・L・カニンガム)が原作通りであったことがわかりました。井戸掘りで危うく死にそうになるのは、テレビドラマではエドワーズでしたが、原作ではスコットというような部分的な違いはありますけどね。 父親は家を作り、野に出て獲物をとり、畑を耕して作物を育てる。母親は、炊事・掃除・洗濯に子供たちの教育。子供たちは、親の言いつけを守る。そして、互いに協力しあって暮らしていく。現在では失われた理想の家族像です。ただ、あんな生活をしたいかというと、答えはノーです。快適な生活にドップリ浸かった私としては、精神的荒廃が進もうと、現在の暮らしの方がいいで〜す。 |
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『愛は荒野をめぐる』(ヘザー・グレアム:著、駒月雅子:訳) ハーレクイン・ヒストリカル:2006年12月6日初版発行 1862年のカンザスとの州境に近いミズーリの村が舞台。両親をカントレル・ゲリラの一味に殺され、自分も乱暴されそうになったヒロインを通りかかったテキサス男が助けます。男は妻を北軍ゲリラのレッド・レッグス一味に殺されており、犯人を追って旅をしていたんですな。 ヒロインは男を用心棒として雇い、男も行きがかりじょう農場に滞在することになります。ヒロインは南部を憎み、男は北部を憎んでいるのですが、男と女が一緒に暮らしはじめると、当然愛が芽生え、ハーレクインの世界となるわけです。ラストでは復讐を果たし、西部劇らしい決着となっています。 |