女子プロレスのレコード

 一次期、私はプロレスにハマっていたことがありましてねェ。プロレスと名のつくものなら、海外の動向から、
ミゼットプロレス、そして女子プロレスまで興味を持っていました。
 私が女子プロレスで最初に名前を覚えたのが小畑千代。
 1968年〜69年頃、テレビ中継がありまして、ファビラス・ムーラとの世界タイトルマッチ(世界の名前はつ
いているが、日本での興行用に作られたチャンピオンベルトだと私は思っています)を、手に汗握って見てい
ましたよ。小畑千代の得意技“吊り天井(ロメロ・スペシャル)”は、ヘビーウエイトの男子プロレスではお目に
かかることがなかったので、新鮮でしたねェ。
 小畑千代のタッグのパートナーが佐倉輝美で、若手にアイヌ出身のエオマップ・ピリカなんてのがいました
が、はっきり言って皆オバチャン。観客もスケベーそうなオジサンたちばかりでした。

 女子プロレスがアイドル化していくのは、「花を咲かそう」というレコードを出したマッハ文朱あたりからです
かね。ビューティ・ペア(ジャッキー佐藤、マキ上田)になると、宝塚のノリになり、完全に少女たちのアイドルに
なりました。

 
『花を咲かそう』(千家和也:作詩、平尾昌晃:作曲)
 B面:ひとり星(千家和也:作詩、平尾昌晃:作曲)

 ♪ 花を咲かそぉ〜 心に花を〜

 アイドル歌謡というより、スポコン歌謡ですね。
 マッハのジャケ写真もスポコン顔だ。
 だけど、女子プロレスのファン層の年齢を引下げた功績は大きいですよ。
 私もマッハに興味を惹かれたクチでして……

 
 ビューティ・ペア誕生の経緯というのが面白くて、1976年1月にマッハが突然引退宣言をしたことに端を発
しています。慌てた会社は、所属する女子レスラーの中から、比較的可愛い顔?した二人にコンビを組ませ
ました。
 当時「ビューティフル・サンデー」がヒットしていたのでビューティ・ペアと名付け、大評判だった「ベルサイユ
のバラ」から、ジャッキーに男役の、マキに女役の宝塚風コスチュームを着せ、リングで歌まで歌わせたんで
す。
 二人が肩寄せあって歌う「かけめぐる青春」はヒットしましたねェ。でもって「真赤な青春」、「青春にバラはい
らない」へと続くわけです。
 

『かけめぐる青春』
(石原信一:作詩、あかのたちお:作曲)
B面:真夜中のひとりごと
(石原信一:作詩、あかのたちお:作曲)

『真赤な青春』
(石原信一:作詩、あかのたちお:作曲)
B面:しあわせ通り
(石原信一:作詩、あかのたちお:作曲)

『青春にバラはいらない』
(石原信一:作詩、あかのたちお:作曲)
B面:幸福のゆくえ
(石原信一:作詩、あかのたちお:作曲)

 
 ビューティ・ペアの人気により、それまで女子プロレスのファンだった中年のオジサンたちは傍らに追いやら
れていきます。
 ビューティ・ペアはWWWAタッグチャンピオンで、当時のシングルチャンピオンは赤城マリ子さん。中年の
オジサンに絶大なる人気があった“お水系”の美人レスラーでした。かく言う私もファンだったんだよォ。
 中年のオジサンより、これからは若い娘ッ子だ、と会社が考えたのかどうか知りませんが、シングルもビュー
ティ・ペアにということで、マキが赤城マリ子に挑戦してチャンピオンになるんですよ。
 次はビューティ対決ということで、ジャッキーがマキに挑戦して、人気・実力的にも上だったジャッキーがチャ
ンピオンになります。でもって、ジャッキー佐藤が単独で出したシングルが「もしも旅立ちなら」なんです。
 
『もしも旅立ちなら』(伊達歩:作詩、あかのたちお:作曲)
 B面:Ciscoを探せ(伊達歩:作詩、あかのたちお:作曲)

 ♪ 靴音の後から付いて来る 微笑を 小さな鞄につめて
   あなたに逢いに行きたい あなたに逢いに行きたい〜

 完全にラブソング。ジャッキーのイメージとは全然あわないなァ。

 ところでB面のCiscoって、一体何なんだ。

 
 ビューティ・ペアの後の世界タッグチャンピオンが、ビクトリア富士美&ナンシー久美のゴールデン・ペアで
した。ビューティ・ペアはお世辞にもビューティとはいえませんが、ナンシー久美は美人でしたね。
 彼女がレコード・デビューしたのが「夢みるナンシー」でした。活躍期間は短かったのですが、その影響力は
絶大ですよ。
 若くして亡くなったナンシー関さんは大のプロレス・ファンで、ナンシー久美にちなんでナンシーにしたという
話を聞いたことがあります。
 それと、雅子妃殿下も学生時代は女子プロレスのファンで、やはりナンシー久美が好きで、自分でナンシー
雅子と名乗り、プロレスごっこをしていたそうです。私の友人からの話なのでアテになりませんが……
 
『夢みるナンシー』(千家和也:作詩、菊地俊輔:作曲)
 B面:ロックンロール・ベイビー(千家和也:作詩、菊地俊輔:作曲)

 ♪ Dream Dream Nancy〜 Dream Dream Nancy〜
 少女の恋する気持ちを歌ったアイドル歌謡。スポコンなんて、ひとかけらも
ありません。

 B面なんて、どこがロックンロールだ。甘〜い、甘〜いアイドル歌謡ですよ。
 ♪ ヘイヘイナンシー 内気なベイビー ヘイヘイナンシー 恋するベイビー
ですからね。

 ビューティ・ペアは好みじゃなかったけど、ナンシー久美には惹かれたなァ。

 
 ナンシー久美の美少女系を継いだのが、アイドルから女子プロレス入りしたミミ萩原
です。アイドル歌手としてデビューしたが、今イチ人気が出ず、女優として『プレイガー
ルQ』でパンチラ・アクションを見せていたかと思うと、いつのまにか女子プロレスへ。
 とにかく弱かった。負けてばっかり。ドラマのようにはいかないよ、と思ってウォッチし
ていなかったら、ハリウッドへ行って『カリフォルニア・ドールス』なる映画に出演したか
と思うと、知らない間に帰国してチャンピオン(オールパシフィック・チャンピオン)になっ
ていました。
 さんざ痛めつけられて、あわやというところで“回転エビ固め”なんかで逆転勝ちする
吉村道明流の根性レスリング。半分以上ヤラセくさかったですけどね。
 アイドルといっても、元は歌手なので、他の女子レスラーより圧倒的に歌は上手いで
すよ。 

 ♪ Sexy Panther Sexy Panther 罪なあなたに バラの吐息吹きかけて
    Sexy Panther Sexy Panther 愛を食べるの ひとかけらも残さずに

 「セクシー・パンサー」なんて最高!

 

『セクシー・パンサー』
石原信一:作詩
馬飼野康ニ:作曲

B面:サバンナ物語

石原信一:作詩
馬飼野康ニ:作曲

『セクシーIN THE NIGHT』
斉門はし羅:作詩・作曲

B面:Burning My Love

シミズヤスオ:作詩・作曲

『愛(アイリーン)鈴』
斉門はし羅:作詩・作曲

B面:ブロードウェイ・ドリーム

シミズヤスオ:作詩・作曲

『スタンド・アップ』
岡田富美子:作詩
長戸大幸:作曲

B面:ワン・ナイト・メモリー

岡田富美子:作詩
長戸大幸:作曲

 
 ジャッキー佐藤はジャガー横田に敗れ、ジャガー時代がくるのですが、ジャガーと対抗するのがデビル雅美
です。ヒールなんですが、ジャガー以上に人気を呼び、出したのが「燃えつきるまで」というレコード。
 デビルの下で、ダンプ松本、クレーン・ユー、ブル中野が悪党修行をつんで極悪同盟を結成。ダンプにクレー
ンにブルドーザーという土方集団で、こちらは完全に色気抜き……
 一方デビルは、ヒールからストロング・スタイルに変身し、ジャガーと実力を二分するエースとなります。
 
『燃えつきるまで』(倉光カオル:作詩・作曲)
 B面:はぐれ町(安井公一:作詩、倉光カオル:作曲)

 “紫の炎、悪の女王”が当時のデビル雅美のキャッチフレーズでした。
 デビルが怒った時は、般若の形相でホントに怖かったなあ。
 後年、ヒールからヒーロー(女性だからヒロインか)に変身した時は、魅力が
失われました。

 ♪ ワルだ ワルだと言うがいい 誰に たよった訳じゃない
   自分で選んだ人生に 後指など ささせるものか〜

 デビルは、やっぱりこうでなくちゃあ…… 

『サイレント・グッバイ』(内藤綾子:作詩、水谷公生:作曲)
 B面:バラードの夜(来生えつこ:作詩、岩崎元是:作曲)

 デビル雅美は、女子プロの選手の中では抜群の歌唱力を持っています。
 でもって、女子プロの売りでなく、歌手としてレコーディングしたのがこの曲。
 渡辺典子主演のTVドラマ『赤い秘密』の主題歌なんですよ。
 1980年代は、仕事に忙しくて私がテレビを最も見ていない時期なので、ど
んな内容のドラマか、全然知りませんけど……

 
 女子プロレスは、クラッシュ・ギャルズ(長与千種&ライオネス飛鳥)がデビューして全盛期を迎えます。
 彼女たちは「炎の聖書(バイブル)」でレコードデビューし、ビューティ・ペア以上にアイドル化し、レコードを
次々に発売します。
 私が熱心に観ていたのは、クラッシュ・ギャルズがタッグ・チャンピオンとして君臨していた頃まで。二人が
シングルでファイトするようになって、何故か急速に興味を失っていきましたね。
 
『Super Angels』

 全日本女子プロレス全盛期の頃に発売
されたピクチャーレコード。
 主要レスラーのリング入場テーマが収録
されています。

 曲てきには、大森ゆかりのテーマ「マジ
カル・フォース」、山崎五紀のテーマ「ヒー
ト・アップ」、デビル雅美のテーマ「パープ
ル・タイフーン」がカッコいいですね。

SIDE:1
1.スーパー・エンジェルズ
2.ストーム・ライダー
 (長与千種のテーマ)
3.エクスプロージョン
 (ライオネス飛鳥のテーマ)
4.ダーティ・チェーンズ
 (極悪同盟のテーマ)
5.マジカル・フォース
 (大森ゆかりのテーマ)
6.スティール・ヒロイン
 (ジャガー横田のテーマ)
SIDE:2
1.ヒート・アップ
 (山崎五紀のテーマ)
2.プリズム・サーカス
 (立野記代のテーマ)
3.スパークル
 (小倉由美のテーマ)
4.パープル・タイフーン
 (デビル雅美のテーマ)
5.タワー・オブ・パワー
 (ジャンボ堀のテーマ)
6.ロンリー・アイズ
 (デビル雅美:唄)
 


『炎の聖書(バイブル)』
森雪之丞:作詩
後藤次利:作曲

B面:熱風撫子

松井五郎:作詩
馬飼野康ニ:作曲


『嵐の伝説』

森雪之丞:作詩
中崎英也:作曲

B面:つま先まで I Love You

松井五郎:作詩
中崎英也:作曲


『夢色戦士』

森雪之丞:作詩
後藤次利:作曲

B面:傷心(ダウン)ボーイ

森雪之丞:作詩
後藤次利:作曲


イッキに Rock'n Roll』
森浩美:作詩
吉実明宏:作曲

B面:Run!

三浦徳子:作詩
Dieter Bohlen:作曲


『友情1987』

森雪之丞:作詩
石川恵樹:作曲

B面:BREAK UP!

森雪之丞:作詩
馬場孝幸:作曲

 ♪ マットがぁ 紅いバラに染まる瞬間 
                  クラッシュファイト!〜

 ビューティ・ペア以上にカリスマ性を持っていたのが
クラッシュ・ギャルズでしたが、蹴りや関節技を多用し
た格闘技プロレスは好きになれませんでしたねェ。
 男の世界を女子プロレスで見せられてもね。
 女子中学生が黄色い声を張り上げるガキの世界に
オジサンの居場所はなくなりました。

 「炎のバイブル」の頃は細かった長与千種が、どん
どん太くなって、ラブソングを歌ってもねェ。


どうしたんだ?MYハート
岩里祐穂:作詩
佐藤英敏:作曲

B面:眠れないメモリー

谷穂ちろる:作詩
佐藤英敏:作曲

 
   シングルでファイトするようになったクラッシュ・ギャルズの後継者として登場し
たのが、J・B・エンジェルスです。
 女子プロレス界の聖子ちゃん(当時アイドルだった松田聖子ですよ)と呼ばれ
ていた立野記代と、若手の中ではテクニシャンとして定評のあった山崎五紀が
コンビ結成したんですよ。
 オーソドックスな女子タッグで、私はクラッシュより好きだったなあ。

『(CHANCE)(森浩美:作詩、瀬井広明:作曲)
 B面:STAND IN THE SHADOWS
     〜J.B.エンジェルスのテーマ〜
(Billy Idol & Steve Stevens:作曲)

『青春のエンブレム』(原真弓:作詩、見岳章:作曲)
 B面:ダッシュ(原真弓:作詩、見岳章:作曲)
     
J.B.コーラス隊(小倉由美、小松美加、永友香奈子、永堀一恵)がバックコーラス

『星屑のダンス天国』(森浩美:作詩、吉実明宏:作曲)
 B面:翼を手に入れろ(高柳恋:訳詩、Ben Findon & Mike Myers:作詩・作曲)

 二人で歌うとアラが目立たないので、それなりに聴くことができましたよ。

 
『赤いウィンナー逃げた』(秋元康:作詩、見岳章:作曲)
 B面:ゲゲッ!(伊辺清作:作詩、あらきたけみ:作曲)

 一時期、大森ゆかりとダンプ松本がタッグを組んで、クラッシュ・ギャルズ
と死闘を展開したことがありました。その頃は女子プロらしい顔つきをして
いましたが、これは引退後のコメディ路線。
 体形に合わせて、桃色豚隊(ピンク・トントン)とはね。
 あ〜、ヤダ、ヤダ……
 大森ゆかりは、私好みだったんだけどなあ。

 
『都会の流星』(秋元康:作詩、見岳章:作曲)
 B面:さよならはトライアル
 (森田由美:作詩、見岳章:作曲)

 ハート型のレコードが珍しくてゲットしたの
ですが、ライナーを見て歌っているのが女子
プロレスラーと知りました。
 だけど風間ルミなんて知らないよォ。
 女子プロは、もう卒業!

 

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