2009年度読書録


 

『清張通史T邪馬台国』(松本清張:著)

講談社:1976年11月30日第1刷発行

 

松本清張の生誕100年ということで、各種メディアで色々な特集がされています。小説家としての清張については語ることはないのですが、歴史家としての一面は見逃すことができませんね。多くの推理小説家が古代史研究に手を染めるようになったのは、清張の邪馬台国研究に影響を受けていると思えるんですよ。古代史は謎が多くて、既存史料から様々な推理ができますからね。

今年は奈良で遺跡が発掘され、邪馬台国近畿説が脚光を浴びています。だけど私としては、200年頃に統一王朝ができていたとは、考えにくいんですよ。北九州、出雲、吉備、大和に文化圏があって、邪馬台国は北九州を支配していただけと私は思っています。松本清張も九州説で、倭人の風習や海上交易などの歴史的検証を踏まえており、読んでいて納得感がありま〜す。

 

『「邪馬台国の謎」殺人事件』(木谷恭介:著)

廣済堂:1998年11月15日初版発行

 

「古代日本成立の謎」という本の作者をめぐる連続殺人を扱ったミステリーなんですが、邪馬台国や日本人のルーツについての著者の考えも作中人物の言葉として出てきます。中国の古代江南人が九州から南朝鮮に流れ着き、土着の倭人や韓人を支配するようになり、それが倭国のルーツになったという考えは面白いですね。

中国には黄河文明の他に揚子江文明もあって、農作などの先進技術を持った連中が東シナ海を渡ってきたことは充分考えられるし、中国の漢書や後漢書に記載されている倭人の記述は、北九州から朝鮮半島南部一帯までを含んでいるように読めるんですよ。

倭人は原始的であっても航海術を有した港市国家を作って交易していたんじゃないですかね。北九州の倭人国家が内陸に進出して、さらに大きな国家を築くことは当然の成り行きだと思えますが、卑弥呼が使った鬼道のルーツを調べる必要がありますね。大陸や朝鮮半島における巫女のルーツは……?

 

『ブラッド・メリディアン』(コーマック・マッカーシー:著、黒原敏行:訳)

早川書房:2009年12月25日初版発行

 

14歳で家出したテネシー生まれの少年がルイジアナ→テキサスと放浪し、顔見知りのホールデン判事(判事と呼ばれているだけで真の判事か疑問)に誘われて、グラントンが率いる悪党集団(実在していて、小説に描かれている登場人物もモデルがいるとのこと)に加わり、インディアン討伐(頭の皮を剥いで金を稼ぐ)の旅をする物語です。

時代は1949年の米墨戦争時代で、メキシコ領に侵入してメキシコ人を奴隷にしたりします。生き残るためには、先に銃を抜いて相手を倒すという行動哲学を肯定するような問題小説ともいえますね。この本が書かれた1985年は、ベトナム戦争の後遺症的影響があった時代で、西部劇の世界でも正義のガンマンや騎兵隊が活躍するロマンあふれるものは影をひそめ、開拓時代の社会的矛盾やインディアン虐殺を直視する西部劇(これを修正主義西部劇というのを訳者あとがきで初めて知った)が中心となっていました。

映画化が決定しているようですが、『3時10分、決断の時』や『アパルーサの決闘』のような、西部劇としての面白さは期待できないでしょうね。ちなみに、マッカーシーの原作を映画化した作品には現代西部劇の『すべての美しい馬』と『ノーカントリー』があります。

 

『ザ・テレビ欄1954−1974』

TOブックス:2009年8月31日初版発行

 

実際の新聞に掲載されていた番組蘭(全20年・196日分)を集めたデーター本です。1960年までの番組蘭はまばらですが、1961年からは4月と10月の1週間分の番組が収録されています。

ちなみに、1974年10月13日(日)に私が観た番組(18時以降)は、『てんとう虫の歌』→『サザエさん』→『グレートマジンガー』→『お笑いオンステージ』→『勝海舟』→『東芝日曜劇場』(『日曜洋画劇場』は未見の映画が放映された時)→『ラブラブショー』→『パンチDEデート』→『唄子・啓介のおもろい夫婦』と、アニメ・ドラマ・バラエティと見境ないですねェ。

 

 

表紙へ  目次へ